月別アーカイブ: 2015年2月

地域が求める医療を提供

m4パナソニック健康保険組合
松下記念病院 院長 山根哲郎さん

当院は、松下電器産業(株)(現パナソニック(株))創業者、松下幸之助氏の発案により、1940年に「松下病院」として開設し、1986年に「松下記念病院」として現在の地に移転して、長きに渡って地域の医療を支えています。当院は企業が経営する、いわゆる「民間病院」と思われることが多いのですが、パナソニックが経営している病院ではなく、厚生労働省が監督するパナソニック健康保険組合が設置主体であり、公的病院に近い位置づけになります。したがって、地域が求める医療を公平に提供する使命をもって病院を運営しています。
当院の理念は次のとおりです。
松下記念病院は最高の医療と、患者さまに満足していただける安全な医療の提供につとめます。さらには医の高い倫理性や人間愛を尊重した医療をめざします。
1.患者さまやご家族に信頼される安全で質の高い医療を提供します
2.患者さまに満足していただけるホスピタリティを提供します
3.地域医療連携と救急医療を推進し、地域貢献・社会貢献をめざした医療を行います
4.将来を担う医療人の育成につとめます
5.働きがいと誇りを持てる職場環境を整備し、それを患者さまの満足につなげます

効率的で質の高い医療提供の実現にむけて

当院は非営利の健康保険組合が経営しているという特徴もあり、営利を目的にして病院経営を考えることはできません。しかし、それなら利益は不必要なのでしょうか・・・。そんなわけはありません。自分たちが信じた“いい医療”を永続的に実現させるには、必要十分な資金が必要です。余剰利益を出すことで、理念を遂行するとこへの投資、たとえば医療機器の購入やアメニティの充実、職員の教育や環境整備、もちろん職員に経済的な安心感を与えることも可能になります。利益が低ければ“いい医療”が提供できず、患者さまに満足を提供できなくなって、当院の存在価値はなくなってしまいます。だから当院では、職員全員で利益を実感しながら、経営参画するということを理想として、5年前から“京セラ式(アメーバ式)原価管理”を導入しています。
このシステムを導入してからは、職員全員が成果を意識して、常に行動を振り返りながら働くうになり、医療チームが結束し、効率的で質の高い医療提供の実現へとつながっています。また、それによって自分たちの仕事の価値を実感する看護師さんが増えてきたように思います。

看護師を自慢できる病院にしたい

看護部組織について思うのは、病院の中で看護部門は一大勢力として独立していることへの弊害です。一般的に、病棟には「ナースステーション」があり、患者さまのベッドサイドには「ナースコール」があるのが当たり前になっています。しかし、多職種で医療を提供しているのに、看護師だけが病棟を管理し、患者さまの要望にも率先して応えなければいけない意識は、看護師を多忙にするばかりだと考えます。壁をつくることで、自分たちを追い詰めては意味がありません。そこで当院では、看護師の負担を抑えて看護本来の仕事に打ち込んでほしいという想いから、職員の意識を変えるために「ナースステーション」「ナースコール」という名称を廃止し、どの職種も並列で使う「スタッフステーション」に変え、患者さまからコールがあれば、どの職種であれベッドサイドに足を運ぶ意識改革に取り組みました。また、業務の効率化を願い、機械にできることは機会に任せ、人の手でしかできないことに時間を割くという意味で、院内の運搬業務はロボットを活用しています。
私が願うのは、自分の病院の看護師を自慢できるような病院にするということ。そのために、無駄な業務を削減して、看護師が極力ベッドサイドにいられる時間を確保して、看護の質を高める支援を強化したいと考えています。

ハートがなければ高度な看護は提供できない

看護学生のみなさんに、ぜひ伝えたいのは「ホスピタリティ」の重要性です。私は、ホスピタリティとは「患者さまを愛おしむ気持ち」「博愛の精神」だと考えています。そのハートがなければ医療人ではないといっても過言ではなく、そんなハートを持つのが医療人だから尊敬される存在でいられるのだと考えています。
看護師にとって、高度な知識や技術は大切ですが、それを使う人としての根底にハートがなければ高度な看護は提供できません。そしてそのハートを育てるのは、若いうちに経験を積み重ねていくことしかできないものなのです。そのトレーニングとして、まずは身近な人に心を配ることを癖にしていってください。誰かが困っていたら自ら手を差し伸べることを意識して繰り返すこと、それができないと思う人は、別の道を選ぶ方がお互いのためかもしれません。また、感動する体験を意識的に増やして感性も鍛えていきましょう。
技術はハートでカバーできますが、ハートは技術でカバーできるものではありません。看護師になろうと思うならば、意識してハートを鍛えてください。そして、人々のために貢献して幸せを感じる、そんな看護師人生を歩める基盤を、学生時代につくってくださることを願っています。


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信頼される身近な病院を目指して

m2医療法人社団 智聖会
安藤病院 理事長 北浦奈由さん

当院は昭和22年に創設し、長きにわたって地域の人々に医療を提供してまいりました。現在は、153床を有する24時間対応の救急告示病院として、具合が悪くなったらすぐに訪れられる、地域のみなさんから信頼される身近な病院を目指しています。当法人の理念は、『一人一人を大切にする質の高い医療サービスを提供します』というものであり、一人でも多くの地域の人々によろこんでいただくことを念頭に置きながら、病院を運営しています。
当法人のビジョンは、機能の拡大ではなく、質を向上するということ。理念を遂行するためには、職員すべてが思いやりを持って患者さんやご家族に向き合うことが必要であり、その環境を整えるのが、私の役割だと考えています。当法人の理念に謳っている「一人一人を大切に」というのは、決して患者さんやそのご家族に限った事ではありません。医療機関は職員が創っているものであり、職員一人一人を大切にするということも、法人の理念です。

看護部の質が病院の質に直結

医療機関にとって、看護部組織は一大勢力。看護部の質が病院の質に直結するといっても過言ではありません。看護師さんは、患者さんやご家族にとって最も身近な存在であり、看護師さんが持つ情報は、医療チームにとって貴重なデータ。日々の関わりの中から情報を得て医療チームに提供することで医療サービスの質向上に貢献したり、看護師さんの対応で患者さんの回復力やご家族の安心感を惹き出して医療サービスの向上に直接つなげたりと、医療機関にとって中核的な役割を持つのが看護師さんだといえます。そのため、看護部長が、看護職員のコミュニケーション力の向上や、医療・看護の専門的な知識や技術の向上に取り組むことを支援するのは、病院経営にとって大きな営みだと考えています。

希望を実現しやすいのが中小病院のメリット

医療職に限らず、最近は職場で頭を打つようなことがあれば、すぐに離職を選ぶ人が増えているようです。しかし、頭を打った時こそ、自分が成長する大きなチャンスであり、その場から逃げずに留まって解決にむかう努力が、その人を大きくするのではないでしょうか。とはいえ、私自身も時には逃げ出したくなることもありますが、「ピンチはチャンス!」と肝に命じて、当院で頑張ってくれる職員や、訪れてくださる患者さまに力を頂きながら、奮闘する毎日です。仕事をしていると困難は常に押し寄せるので、職員みんなが支え合って踏ん張れるような人的環境をつくっていきたいと考えています。
看護師さんは、患者さんやご家族が最も心を許しやすい職種。そんな看護師さんが医療機関の中で果たす役割は、これから多様に広がっていくことでしょう。中小規模の民間病院に就職するメリットは「やりたい」と手を上げれば実現できる可能性が高いこと。大きな組織の一員になって活躍するのも素晴らしいことですが、若いうちに自分の力を試したいという人は、中小規模の民間病院で、自分がやりたい看護を組織に訴えていくというのも意義ある選択肢だと思います。
あなたが望む看護が実現しやすい環境を見つけて就職し、未来を切り開いてください。私は、そんなみなさんを応援したいと思っています。

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命を照らしあう福祉環境の実現に貢献

2社会福祉法人 東大寺福祉事業団
東大寺福祉療育病院 病院長 富和清隆さん

今から約1250年前、聖武天皇は盧舎那大仏造立という大事業をすすめ、その大仏をみんなの力で造り「動物も植物も含め、共に栄える世の中にしたい」という願いを立てられました。また光明皇后も悲田院や施薬院を設立し、人々のため共に尽力されたのです。常に国民のことを考え、思いやりの心を広げようと努められたお二人の行動の原点は、お生まれになった皇太子が一歳の誕生日を迎えることなく亡くなられ たことにあります。天皇は亡き皇子の菩提を弔うために金鍾山房を建立され、後にこの山房が東大寺へと繋がっていったのです。
東大寺では、このお二人の願いをひとつの形にするため、聖武天皇1200年御遠忌記念行事として東大寺福祉事業団を設立し、昭和30年7月に肢体不自由児施設「東大寺整肢園」を開設。それが当院の原点です。当院の理念は、盧舎那大仏造立の想いに基づき、東大寺福祉療育病院を通じて、互いの命を照らしあえる福祉環境の実現に貢献するというもの。障害のある子供たちを受け入れて、命を輝かせる支援をする病院です。

社会の変化に応じて担うべき役割も変化させる

社会は常に変化し、当院が担う医療という側面も大きく変化しています。たとえば当院が設立された時代は肢体の不自由さを緩和する手術を受けられる施設は限られており、当院がそれを担っていました。しかし、肢体不自由児の手術は今では多くの病院で可能になりました。一方、肢体不自由児より障害の重い重症心身障害児がたくさん、地域で暮らしています。それなら手術は他院にお願いしてでも今取り組むべきこと、当院にしかできないことをしようじゃないかということで、手術をやめることにしました。では当院にしか出来ないことは何かを検討し、入院については次の4つの角度から子供たちを支えようと考えています。
① NICUの後方支援:脳性麻痺などの可能性がある低出生体重児の退院後をフォロー。
② ショートステイ:在宅の重症児とその家族を支援するために気軽に短期間入院できる施設。
③ 入所施設:在宅での生活が困難になった障害児・者が安心して過ごしながら、自宅外泊を自由に楽しむ長期入院支援。
④ 養育・療育:家庭の事情で自宅に戻れない障害児の豊かな成長をめざす療育。
また、当院とは別組織になりますが、“奈良親子レスパイトハウス“という法人を設立し、親子がともに生きることの意味と喜びを発見する機会をつくりたいと願って活動しています。

広い視野で自分の存在価値を明確にしてほしい

看護師になるみなさんに伝えたいのは、広い視野で支援を考える眼を養って欲しいということです。
たとえば、障害を持つ子どもたちが輝けるのは、ご家族の生活や心の安定があってこそ実現するものだと考えます。ご家族とともに自宅で暮らすのは理想ですが、ご家族がギリギリの状態で療育することで疲弊してしまってはお互いに幸せだとはいえません。ご両親が「この子の親でよかった」と思えるような支援こそが、障害を持つ子供を幸せにすることであり、そのためには私たちがご両親に心や時間の余裕を与える支援が大切だと考えます。そのために必要な支援というのは多々ありますが、当院は、すべてを自院で完結する方向で考えるのではなく、他の医療施設でできることは連携という手段をとって任せる、そして当院にしかできないことをしっかり担いながら、存在意義を明確にするという課題に向かって前進しています。
みなさん自身も、広い視野で自分の存在価値を考え、その価値を多くの人たちが“生きる”ための支援に貢献する。それが看護をめざすみなさんに課せられた課題ではないでしょうか。

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