「後悔のない最期の時間と自宅の看取りをサポートしたい」と考え起業

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Q 看護職を目指したのはなぜですか?

起業2子どものころ、一緒に暮らしていた祖父が突然寝たきりになり、私が小学5年生のときに他界しました。後を追うように祖母も1年後に亡くなり、母は何かにすがるように宗教に傾倒していきました。私が高校生になっても祖父母の形見はそのままで、母はずっと両親の死を受けいれられずに苦しみ続けているのだと感じていました。
看護系大学に進学しようと決めたのは、母の苦しみの正体を理解したいという思いから。看護師になって病院で勤めたいという気持ちは待たない学部選択でした。

Q 大学時代の学びを教えてください

大学でさまざまなことを学ぶ中で、次第に母の苦しみの正体がわかってきました。母は、あまりにも祖母が突然亡くなったために「感謝」の気持ちを伝えられなかったのです。もはや「祈る」ということでしか両親に感謝を伝えられないから、宗教にすがったのでしょう。母が宗教に傾倒していくことが嫌だと思っていた私ですが、母からそれを奪うことはやってはいけないこと、それも受けいれて、母を看ていこうという決意が私の心の奥で次第に強いものになっていきました。
そんな自己の経験から、医療では取り除けない痛み、『心』『家族』『社会』などに関わる、人の痛みの問題に取り組みたいという気持ちが芽生え、それが今の仕事につながっています。

Q 起業のきっかけを教えてください

高校3年のころからいつかは起業をしたいという希望を持っていましたが、大学に入ると「すぐにでも起業したい」という意識に変わり、ライフセーバーのアルバイトをしながら起業への準備を進めていきました。
医療福祉業界での起業を考えていたので、まずはNPO法人で精神障がい者向けの就業支援に携わりました。そのとき、志はあっても経理や財務、経営のノウハウがなければ継続的に事業として成立できないことを痛感しました。また、自分は看護師として目の前の人を助けるのではなく、志を持って看護に打ち込む人たちを助けるような仕事がしたいとも思うようになったのです。
そんな経験を積みながら、大学から資金を得てボストンへ行き、日米の精神障がい者支援の実態について調査分析をして卒業論文にまとめました。そして大学を卒業して1年間、医療系の企業で営業を経験したのち、23歳で起業しました。
起業の直接的きっかけは、友人にエントリーを勧められた社会人向けビジネスプランコンテストへの出場です。参加した230組の中で最優秀賞を頂き、多額な資金を必要としないビジネスモデルだったので迷わず起業の道を選びました。

Q どのようなビジネスなのですか?

起業2_2私の会社は、慣れ親しんだ家で最期の時を迎えたいという患者さんや、自宅で家族を看取りたいというご家族に対して、看護師が自宅に伺い、その希望を叶えるのが仕事です。
私は「両親を満足して看とれなかった」という後悔を引きずって生きる母の姿を目の当たりにした者として「余命宣告を受けてから最後の親孝行を実現する会社になります」というビジョン掲げ、残されたご家族が、思い出や亡き人の存在に見守られて背中を押されながら人生を歩めるようにサポートをしています。
具体的には、余命3カ月と宣告され、自宅療養を望む方にお申し込みをいただいて、専門知識を持つ看護師が患者さんやご家族とどんな最期を迎えたいかを話し合います。そして希望を叶えるために、必要に応じて看護師以外の職種の人と協力しながら患者さんやご家族を助けます。一般的に、訪問看護には医療保険や介護保険が使えるのですが、公的な保険を使って出来る支援は限られます。そのため、保険だけに頼らず、ご希望に応じた看護をオーダーメイドするのが当社の仕事です。

Q これからの目標は?

私は、日本では「死」への準備教育が遅れていると感じています。日本はまだ「死」に対してオープンに語り合える社会ではありません。だから私は、終末期教育に特化したエンディングコーチ協会を設立するとともに、「おくりびとアカデミー」という、納棺師(湯灌師)を養成する学校を立ち上げました。命の終焉に寄り添い、エンディングノートや人生の棚卸しなど、日本の社会がこれまで重要視していなかった「死」への準備がお手伝いできる人を増やしたい。それが私の願いです。
誰もが逃れることのできない「死」と向き合って、人生で一度きりの幕の引き方を、もっとオープンに語り合える社会をつくっていきたいと思います。

高丸 慶さん(保健師・看護師)
株式会社ホスピタリティワン 代表取締役 
一般社団法人エンディングコーチ協会 代表理事
株式会社おくりびとアカデミー 取締役兼校長
株式会社ホスピタリティワン>>>

※本紹介は、メヂカルフレンド社「クリニカルスタディ」2014.1月号に掲載されたものです。

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