“子どもを育てる”視点で小児専門の訪問看護ステーションを設立

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Q 看護師になろうと思ったきっかけは?

起業3子どもの頃は体が弱く、受診のたびに怖い思いをしていた私は、看護師に対するイメージそれほどいいものではありませんでした。しかし小学6年生の時に虫垂炎で入院し、看護師のイメージが一変。術後の痛みと不安な気持ちでいっぱいの私に対し、担当の看護師さんはずっとお腹をさすって、寄り添ってくれたのです。その対応で痛みも気持ちも和らいぎ、看護師の手は魔法のようだと思って看護師の持つ力を実感。それがこの仕事に興味を持ったきっかけです。
また、中学生の時に叔母が他界したのですが、当時の私は「死」について深く考えることはなく、ただ怖いという気持ちしかありませんでした。しかし余命3か月と宣告されてからの叔母の生き方を目の当たりにし、最期の時間は神様が与えてくれた大切な時間。その時間を有意義に過ごせるようにお手伝いが出来たら幸せだと思ったのです。そして中学を卒業する時には「看護師になろう」と決意していました。

Q 心に残る看護の場面を教えてください

看護師になり、最初に就職したのは神経難病の患者さまを受け入れる筋疾患・重症心身障害児のお子様が療養する病院。現在の医療では治療方法が見つかっていない、筋ジストロフィーなどの患者さんがたくさんおられる病院でした。
当時の私は、回復が見込めない患者さんを目の前にして「可愛そうだ」という感情しかなく「何とかこの人たちの力になりたい」という気持ちだけで看護をしていたように思います。病棟には小児もたくさん入院していたのですが、ある日、ある患児の状態が悪くなり「看護師さん死にたくないよ・・・」と言って私の手首を握りながら亡くなったのです。急なことで、お母さんは最期の時に間に合いませんでした。
進行性の疾患を持つ子どもにとって、時間は何より貴重です。その大切な時間を家族と離れて過ごし、家族に触れることなく逝ってしまった子どもの気持ち、そしてわが子を看取れなかったご両親の気持ちを想うと居たたまれない思いがしました。
そのころでしょうか、「病気を持つ子どもたちが家庭で過ごせる社会をつくりたい」という気持ちが私の中に芽生えたのです。

Q 訪問看護をしようと思った理由は何ですか?

日々、神経難病のハンディキャップを背負った子どもたちを看護していくなかで、「正常な子どもの発達を知ることも大切だ」「一般的な小児疾患を持つ子の看護も勉強したい」と思うようになりました。
そこで、子どもの専門病院に転職したのですが、入院中の子どもたちは、家族と一緒にいる時間は、独りの時と表情が違うことを目の当たりにしたんです。そして「やはり子どもは家で育つのが一番だ」という気持ちが強くなり、そんな支援をしたいと考えるようになりました。
しかし看護師を続けるうちに、そんな気持ちは薄らいでいき、一般病棟病院や高齢者の介護施設で看護師・ケアマネジャーとして働いたのですが、ある日のこと「小児看護の経験を活かして子どもの訪問看護やってみたら?」という言葉をいただく機会がありました。その時私はハッとして「そうだ!私は病気を持つ子どもを家に帰したいと思っていたんだ!」という気持ちがよみがえったのです。そしてしばらく考え、小児専門の訪問看護をしようと決めて準備を始めることにしました。

Q 初めに起こした行動を教えて下さい

まずは資金を集めると同時に、経営の勉強を始めました。また「訪問看護ステーションはどうしたら設立できるのだろう?」と役所に問い合わせ、一つひとつ疑問を解決しながら水面下で準備を進めました。株式会社を設立することを決め「よしやろう!」と決意してからラストスパートは半年。念願の小児に特化した訪問看護ステーションを立ち上げたのは2012年のことです。
当社の社名は「Ange plume:アンジブレムアンジュプリュム」。これは「天使の羽」という意味で「親鳥が羽で覆って子どもを大切に育てられるように」という願いを込めた社名です。

Q 看護で大切にされていることは何ですか?

起業3_2疾患を持つ子どもたちが家庭で過ごし、その子のペースで発達できるように、私たち看護師はお母さんを支え、子どもたちの健康を護ります。
当、ステーションのこだわりは「育む」ということ。医療だけではなく、養育支援に力を入れています。「障害があるから出来ない」とあきらめるのではなく、障害があってもできる遊びを取り入れながら、心も体も発達できるようサポートするのが私たち看護師の役割だと考えています。
脳死状態のお子さんでも、家族と過ごしていれば24時間の中で変化があることがわかります。自宅というのは子どもが持つ生きる力を惹きだしてくる不思議な力があるということを、看護の中で実感しています。

Q 看護のやりがいとこれからの目標は?

家が小さな病院になるのではなく、子どもたちが育つ場所になるように、ご家族の気持ちにも配慮して、ご両親が子どもたちに心穏やかに関われるようサポートするのも私たちの役割だと思っています。
私たちは、家庭の主役はご家族。その家族の一員として存在する子どもたちを一緒に育てているという気持ちで訪問看護をしていますが、そうしていると、反応がなかった子に反応が見れることもあるんです。そんな時は「私たちがやっているのは間違いでない」と思って、大きなやりがいを感じます。
これからの目標は。虐待を受けた子どもたちや、そのご両親の心をサポートすること。どんな子でも家庭で育てる社会を作りたいという希望に向かい、看護の幅を広げていきたいと考えています。

多田由美さん(看護師)
株式会社Ange plume 代表取締役
株式会社Ange plume>>

※本紹介は、メヂカルフレンド社「クリニカルスタディ」2013.12月号に掲載されたものです。

“子どもを育てる”視点で小児専門の訪問看護ステーションを設立」への2件のフィードバック

  1. 初めまして、看護学生なんですが、今からでも
    訪問看護したいと思います。
    学生からでもできることはありますか?

    1. よっぴーさん

      看護学生キャリアの学校事務局です。
      3月にお問い合わせをいただいていたのに、そのままになってしまい申し訳ありませんでした。

      今、訪問看護の現場は若い力を求めています。これまで、病院の経験を積んでからでないと訪問看護はむつかしいといわれてきましたが、最近は新卒看護師の教育システムを整えられつつあります。
      ご自宅がどの地域かわからないですが、関東では新人が活躍していますよ→。http://carepro.co.jp/serial/file07_01.html

      今回、お返事が遅くなり申し訳ありませんでした。
      また何でもご相談くださいね!

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